世界2.0 メタバースの歩き方と創り方

佐藤 航陽 著

幻冬舎

紹介

著者は佐藤航陽氏。
学生のときにIT企業メタップスを創業され上場まで導かれた後、
スペースデータを創業され、宇宙という領域までに手を広げられています。
最近はYouTube等でメタバースについて各種の対談をされるなど、
本記事を読んでいる方にとってはすでに有名な方かもしれません。

そんな経営者でありかつ自らサービス開発をされてきた方の視点でメタバースの歩き方、メタバースを体験することがどういう意味なのか、どういった意味を持ってくるのか、メタバースの創り方、メタバースをビジネスとして創造していく上で、どういったことをしていく必要があるのか、が解説されております。

メタバースの現状に対する著者の認識や考えと、経営者視点から見たメタバースの創り方に対する考え方は、これからメタバースへのビジネスを考えている方には一読に値する内容となっているでしょう。

レビュー

3DCGの利用の一般化

“技術的な歴史を踏まえ、webでの3DCGの利用はさらに一般化、容易化するということは自明である”というのが筆者の考えの前提に立っています。
技術の高度化という点だけではなく、これはコンテンツの作り方自体が容易していくということも含んでいます。
これについては現時点ではどういった形態になるのかは想像もつきませんが、たしかにこれまでのHPの作成や動画編集ソフトなどいくつかの事例を思い返してみると、なるほどその通りだと思わざるを得ません。
“個人が3DCGを簡単に扱える”ということを前提にビジネスを考えていくことが必要になるのでしょうか。

3DCG製作ツール blender
ゲームエンジン Unity

メタバースの体験はゲームが入口となること

ゲームが入り口というのは、これまでのファクトから言って非常に納得感のある見解と感じました。 
同時に、実際にすでにその現象が事実として大きなビジネスになっている点も衝撃です。
Epic GamesのFortniteの課金による売上規模や、Epicが有するUnreal Engine(3DCGの物理演算
ライブラリ)といった開発者向けの技術資産を見ると、なるほどと言わんばかりの示唆です。
ビジネス拡大やサービスがプラットフォーム化する過程では、最初の一発目が重要な訳ですが、メタバースではそれがゲームという点は見落とされていた点だとおもいます。
ゲーム会社、ゲームを楽しむ世代ユーザーの動向を今後興味深く考察していく必要がありそうです。

Fortnite  ゲーム⇒メタバース?
マリオカート ライブ ホームサーキット  ゲーム⇒メタバース?

クリエータが最も得をする

従来のweb2.0ではYotube等のSNSで膨大なトラフィックを生み出すインフルエンサーに大きなメリットがありました。
一方でこれからのブロックチェーン/NFTの技術が普及して構築されるweb3の世界では、
メタバース上でのアイテム等を作成して提供するクリエーターに大きなメリットがもたらされることが大きな変化であると述べられています。
この点については、web2.0の勃興期でもそうでしたが、インフルエンサーなる存在が大きくなることは予見されていました。
当時は、頭ではそれが理解できても、体感としてどういったものなのかが理解できませんでしたし、本当か?と、うがった見方をしていたことを思い出しました。
結果的には、本当にそうなった現在の現実を見ると、歴史の教訓に従って、クリエータの活躍を活かす場を提供する/クリエータとして活躍することへの挑戦が大きなビジネスの機会になることを心に留めておく必要がありそうです。

世界の創り方

メタバースのサービスの場を提供するための手法や考え方が示されると同時に、メタバース特有の場の創り方=視覚編というものがあり、こちらがこれまでのwebサービスにはないメタバース特有の視点で興味深いです。
「人間は景色に鈍感、人の外見に敏感」「人格個性を表現投影したい」という特性があることから、ユーザがアバターそのもの、外観を表現できるような手段を提供していくことが重要だとする旨を著者は述べています。
ChatGPTが話題になっているように、生成型のAIの進歩が目覚ましいため、こういったツールがアバターの自動生成に今後なんらかの形で寄与するようにもおもえます。